当クリニックについて
院長の一言
徒然なるままに⑥~カルテの保存期間
2025/07/10 ある日、勤務先のクリニックに一本の問い合わせが入りました。懐かしいお名前に心が動かされました。その方は、なんと私が35年前に手術を担当した患者さんだったのです。当時勤務していたのは、現在とは別の地方の病院でした。早速、その病院に連絡を取り、当時のカルテや記録が残っていないか確認しました。しかし、返ってきたのは「保存期間を過ぎており、記録は残っていない」との回答でした。医療記録の保存義務期間は法律で「5年」と定められており、それを過ぎた場合には保存の義務はありません。けれども、患者さんにとっては、その記録はかけがえのない人生の一部であるはずです。この保存期間の制度は、紙カルテが主流だった時代に設けられたものですが、ITがこれほど進化した今となっては、「5年」はあまりにも短いのではないかと思わずにはいられません。もちろん、35年前という年月はかなり昔のことかもしれません。それでも現在の技術をもってすれば、記録の長期保存は十分に可能な時代です。患者さんのことを思うと、さまざまな想いが胸をよぎりました。後日、現在の担当医に記録が見つからなかったことをご報告したところ、患者さんは入院時に「昔の主治医」として、私の名前をお話しされたとのこと。それを聞いて、35年という歳月を経てもなお、私の名前を覚えていてくださったことに、思わず心が温かくなりました。
