当クリニックについて
院長の一言
徒然なるままに④~落語~
2025/06/04
つい先日、生で落語を聞く機会がありました。川崎いのちの電話活動支援チャリティー寄席のチケットを出囃子三味線の名手として知られる方からいただき、足を運んだのです。これまでテレビで落語を目にすることはあったものの、実際に寄席で味わうのは初めての経験でした。幕が上がり、噺家が語り始めると、気がつけばその世界に引き込まれていました。言葉のリズム、間の妙、そして絶妙な仕草が重なり、目の前に情景がくっきりと浮かび上がる、その感覚に驚きました。まるで映画のようです。映画は監督や脚本家、俳優によって作られるものですが、私の脳裏に広がる光景は、落語家の語りを受けて、私自身が描き出した世界です。ここに、大きな違いがあります。まるで本を読んでいて、物語の情景が心の中に広がるような感覚でした。ふと最近話題になっているAudibleというアプリのことを思い出しました。朗読を通じて、聞く人が自身の想像力で物語の世界を構築し、楽しむというものです。これもまた、落語と同じく「語り」の力が生み出す魅力なのでしょう。この歳になり、新たな世界を知ることができた喜びを改めて噛みしめています。落語という語りの芸術は、ただ笑いを提供するだけではなく、私たちの想像力を刺激し、心の中に広がる物語の世界を楽しむものなのですね。人の言葉が持つ力の奥深さを、改めて実感したひとときでした。
