診療科のご案内

減量外科外来

はじめに

肥満は糖尿病や高血圧症だけでなく、睡眠時無呼吸症候群やうつ病など様々な病気の原因となります。一般的には食事制限や運動療法などの内科的治療が試みられますが、必ずしも期待した効果を得られないのが現状です。 そのため、海外では古くより手術による治療が行われてきました。現在では、肥満症に対する外科治療は内科的治療に比べて非常に効果が高いことが分かっており、世界で最も数が多い消化管手術(2016年には68万件以上)となっています。
一方、わが国では、減量手術は1980年代初めに導入されたものの、施行件数は限られていました。 その後、2014年に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、2024年に腹腔鏡下スリーブバイパス術が保険診療で行えることになったこともあり、増加傾向にあります。 当院では保険診療による腹腔鏡下スリーブ状胃切除術腹腔鏡下スリーブバイパス術を行っております。

担当医による動画解説【病院がつくった健康情報サイト「みんなの健康塾ちゃんねる」】

生活習慣病 肥満症

【外科医師監修!】 肥満症に対する外科治療とは

皆様の健康維持と増進、病気の早期発見と治療に役立てて頂けるよう、「みんなの健康塾ちゃんねる」を開設しました。第二川崎幸クリニックや石心会グループの医師・看護師・検査技師・理学療法士・管理栄養士が監修した医療情報を発信しています。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術とは

胃の大部分を切り取り、バナナ1本くらいの大きさにする手術です。腹部に5-15mm程度の孔を5ヶ所開け、腹腔鏡を用いて手術を行います。 胃の容量が小さくなるとともに、食欲を増進させるホルモン(グレリン)の分泌が抑制されるため、少量の食事で満腹感を得られます。世界で最も多く行われてる減量手術であり、日本でも約90%がこの術式です。

腹腔鏡下スリーブバイパス術とは

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術と同様に腹部へ5ヶ所の孔を開け、手術を行います。 従来から行っていた腹腔鏡下スリーブ状胃切除術に、十二指腸~小腸の一部へ食物が通らないようにするバイパスを加えることで、強力な体重減少や糖尿病の改善効果が得られます。吻合の方法には下記の2種類があり、状況に応じて適切な方法を選択致します。

単一吻合術

ルーワイ吻合術

単一吻合術

ルーワイ吻合術

手術の対象となる患者様

当院では保険診療による腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、及び腹腔鏡下スリーブバイパス術を行っております。適応は下記のようになります。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の適応

  • BMI 35㎏/㎡以上
  • 糖尿病、高血圧症、
    脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群又は非アルコール性脂肪肝炎を含めた非アルコール性脂肪性肝疾患
    のうち1つ以上を合併
  • 6カ月以上の内科的治療
  • BMI 32~34.9㎏/㎡で
    重症の糖尿病を合併

腹腔鏡下スリーブバイパス術の適応

  • BMI 35㎏/㎡以上
  • 糖尿病を合併
  • 6カ月以上の内科的治療

その他、術前に減量、禁煙が出来ることや、術後に長期的な外来通院が出来ることが条件となります。

手術は楽をして痩せるための手段ではありません。術後、長期にわたる食事療法・運動療法の継続を行う必要があることを御理解頂く必要があります。手術は一つのきっかけであり、術後に自分の生活習慣を変えていく努力が最も重要です。 そのため、術後1年間は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月に外来受診して頂きます。その後は体重減少などを考慮しながら、半年~1年毎の受診をお願いしております。なお、受診が難しい患者様に対し、電話などで連絡をとらせて頂く場合があります。

BMIの算出をしてみましょう!

身長:cm

体重:kg

BMI

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下スリーブバイパス術のデメリット

  • 手術の合併症は、死亡率0.2%、縫合不全1~2%とされています。その他に起こりうる合併症として、出血、感染、肺炎、肺梗塞、心筋梗塞等があります。
  • 術中に他臓器損傷や多量の出血を伴った場合、開腹手術へ移行することがあります。
  • 術後に胃食道逆流症を合併した場合、胃薬を飲み続ける必要があります。重症化した場合、再手術が必要となることがあります。
  • 鉄、亜鉛、ビタミンなどの補充療法が必要となることがあります。

手術前後の流れ

  • 初診外来

    問診
    身体測定
    血液検査

  • 外来受診

    栄養指導
    運動療法
    内科受診など

  • 検査

    上部(胃)内視鏡検査
    CT検査など

  • 説明

    検査結果の説明
    手術の説明

  • 治療

    入院・手術入院期間5日※手術後3日で退院

  • 退院後

    外来

  • 術前外来(数回):初診時に問診、身長・体重測定、血液検査などを行い、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下スリーブバイパス術の保険適応であるかを調べます。基準を満たした場合、栄養指導、運動指導、内科受診などを行います。
  • 術前検査(2日間):手術適応があると判断された場合、上部消化管内視鏡検査、腹部CT、心エコーなどを行います。
  • 手術の説明(1日間):術前検査の結果を踏まえ、今後の方針を説明します。検査結果の内容によっては手術が延期、中止となる場合があります。
  • 手術:入院期間は5日程度で、手術後3日で退院が可能です。
  • 術後外来:術後1、3、6、9、12ヶ月、その後は1年毎となります。

実績

2019年12月より2023年12月までに154名の患者さんに対し腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行いました。
平均手術時間は約2時間であり、2020年以降に手術を受けた患者さんは全て術後3日目に退院されました。
また、術後1年目の平均体重減少は約35kgでした。

網木医師による経過報告

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の手術成績

2019年12月~2023年12月 手術症例 (154名)
手術時間(分) 113.9分(±24.1分)
重篤な術中合併症 0
再手術 0
再入院(術後30日以内) 0
術後在院日数(日) 平均3日(2~5日)

術後の体重減少

術後の体重減少

手術の対象とならなかった患者様

外来受診をして頂いても、様々な理由により手術の対象とならない患者様がいらっしゃいます。こうした患者様に対しては、合併疾患に応じて該当科(糖尿病内科など)を御紹介させて頂き、手術以外の手段でサポートさせて頂きます。

担当医師

網木 学

網木 学(Manabu Amiki)

資格:
麻酔科標榜医
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医、評議員
検診マンモグラフィー読影認定医
日本ヘルニア学会評議員
厚生労働省指定オンライン診療研修修了

高度肥満の患者様に対する腹腔鏡下手術は難易度が高く、特殊な技術を要します。手術を担当する医師(網木)は、減量外科の国内最多の症例数を有する施設で2年間の専門的なトレーニングを行い、300例以上の手術と周術期管理、更に外来診療にも携わった経験を有しています。

論文

  • Minagawa, Yume, Amiki, Manabu, et al. "Laparoscopic sleeve gastrectomy as a bridge to colorectal cancer surgery for obese patients: a case report." Surgical Case Reports 10.1 (2024): 211.
  • 網木 学. 高度肥満患者に対する腹壁ヘルニア修復術. 臨床外科. 2023. 78(4), 480–485
  • 網木 学. 高度肥満症例に対する治療戦略, ダイエット, 減量外科手術. 外科, 2023.11
  • Amiki, Manabu, et al. "Ventral hernia repair with enhanced-view totally extraperitoneal technique after a massive weight loss by laparoscopic sleeve gastrectomy." Surgical Case Reports 9.1 (2023): 27.
  • Amiki M, Ishiyama Y, Harada T, Mochizuki I, Tomizawa Y, Ito S, Oneyama M, Hara Y, Narita K, Tachimori Y, Goto M. Initial entry via the left upper quadrant with an optical trocar in laparoscopic bariatric surgery. Asian Journal of Endoscopic Surgery. 2022 Jan 6.
  • Amiki M, Seki Y, Kasama K, Hashimoto K, Kitagawa M, Umezawa A, Kurokawa Y. Revisional bariatric surgery for insufficient weight loss and gastroesophageal reflux disease: our 12-year experience. Obesity surgery. 2020 May;30(5):1671-8.
  • Amiki M, Seki Y, Kasama K, Pachimatla S, Kitagawa M, Umezawa A, Kurokawa Y. Reduced-Port Sleeve Gastrectomy for Morbidly Obese Japanese Patients: a Retrospective Case-Matched Study. Obesity surgery. 2019 Oct;29(10):3291-8.
  • 網木学, 関洋介, 笠間和典. 【肥満と消化器】 肥満症の治療 外科・内視鏡治療. 臨床消化器内科. 2019;34(4):443-447.
  • 網木学, 関洋介, 笠間和典. 糖尿病外科における手術の選択. Modern Physician. Vol 39. C.S. Lauer; 2019.
  • 網木 学, 関洋 介, 笠間 和典 . RPSによる減量外科手術 . 臨床外科 . 2019;74(10):1258-1263.doi:10.11477/mf.1407212634
  • Amiki M, Seki Y, Kasama K, Kitagawa M, Umezawa A, Kurokawa Y. Portomesenteric vein thrombosis after laparoscopic sleeve gastrectomy in patient with liver cirrhosis. Asian journal of endoscopic surgery. 2019 Apr;12(2):214-7.

学会発表

  • 網木 学. バイパスを見据えた腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の定型化. 第42回日本肥満症治療学会学術集会. 2024
  • 網木 学. ランチョンセミナー『安全性と効率性を追求した減量・代謝改善手術 ~減量・代謝改善手術のこれまでとこれから~』. 第42回日本肥満症治療学会学術集会. 2024
  • Amiki M. Choice of revisional surgery of GERD after SG. The Fifth Symposium of TEAMS (Three East Asian Countries Metabolic Surgery). 上海. 2024
  • Manabu Amiki. Ventral hernia repair with enhanced-view totally extraperitoneal technique after a massive weight loss by laparoscopic sleeve gastrectomy. APMBSS 2023. タイ
  • 網木 学. 当院における腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の教育の現状. 第48回 日本外科系連合会. 2023
  • 網木 学. Portal Mesenteric Vein Thrombosis Following Sleeve Gastrectomy: Report of Two Cases. 第41回日本肥満症治療学会学術集会
  • 網木 学. 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術における fat pad 切除の定型化. 第36回日本内視鏡外科学会総会. 2023
  • 網木 学. インターネットを活用した患者リクルーティング戦略. 第36回日本内視鏡外科学会総会. 2023
  • 網木 学. 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術導入におけるフェローシップの有用性. 第77回日本消化器外科学会総会. 2022
  • 網木 学. 当院における腹腔鏡下にスリーブ状胃切除術の手技のポイントと治療成績. 第84回日本臨床外科学会総会. 2022
  • Amiki M, Ishiyama Y, Narita K, Goto M, et al. Impact of Bariatric Fellowship Training on Perioperative Outcomes for Laparoscopic Sleeve Gastrectomy in the First Year as a Consultant Surgeon. ELSA 2021
  • 網木 学, 石山泰寛, 成田和広, 後藤 学 他. 肥満外科手術におけるoptical法によるfirst trocar挿入のポイント. 第34回日本内視鏡外科学会総会. 2021
  • 網木 学, 石山泰寛, 成田和広, 後藤 学 他. 当科における腹腔鏡下スリーブ状胃切除術定型化の試み. 第83回日本臨床外科学会総会. 2021
  • 網木 学, 石山泰寛, 成田和広, 後藤 学 他. 当院における腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の導入と治療成績. 第389回外科集談会. 2021
  • 網木 学, 関洋介, 笠間和典, 北川美智子, 梅澤昭子, 黒川良望. Portal mesentric ven thrombosis after sleeve gastrectomy:a report of two cases. 第33回日本内視鏡外科学会総会. 2021
  • 網木 学, 後藤 学, 石山泰寛, 成田和広 他. 当科における腹腔鏡下スリーブ状胃切除術におけるOptical View法によるFirst Trocar挿入の成績. 第38回日本肥満症治療学会. 2020
  • Amiki M, Goto M, Ishiyama Y, Narita K et al. MIDSLEEVE Used as a Calibration Probe during Laparoscopic Sleeve Gastrectomy. KSELS 2020
  • 網木学, 関洋介, 笠間和典, 北川美智子, 梅澤昭子, 黒川良望. 肥満症外科治療における修正手術 (revision surgery) 効果、安全性. 第31回日本内視鏡外科学会
  • 網木学, 関洋介, 笠間和典, 北川美智子, 梅澤昭子, 黒川良望. 日本人肥満症患者に対するReduced port laparoscopic sleeve gastrectomy (RP-LSG) の成績. 第30回日本内視鏡外科学会
  • Amiki M, Seki Y, Kasama K, et al. Early gastric cancer treated by ESD. APMBSS 2018
  • Amiki M, Seki Y, Kasama K, et al. Revisional bariatric surgery for inadequate weight loss and complications:our12-year experience. APMBSS 2018

診療担当表

  曜日 曜日 曜日 曜日 曜日 曜日 曜日
午前 網木
午後 網木
夕方
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外来予約

外来のご予約は電話でのみ受け付けております。

予約 TEL:044-511-2112

治療に関する疑問・相談(無料)

治療に関する疑問点などについてはEmailでも対応しておりますのでお気軽にご相談ください。

メール

E-mail:genryou@saiwaihp.org
責任者:網木 学

オンライン初診予約  毎週土曜9:00~9:30

2020年6月より肥満減量外科の初診患者様を対象に、オンライン診療を開始致しました。
当院ではコロナウィルスに対して十分な対策を行っておりますが、それでも、病院に来られることを躊躇されている患者様もいらっしゃるかと思います。そうした患者様は、是非、オンライン診療の活用をご検討下さい。
初診患者様の予約手順は下記のようになります。なお、当科のオンライン診療は、LINEでのビデオ通話のみとなります。そのため、患者様が特別な機器をご準備頂く必要はございません。

担当医 網木 学
診察日 土曜日 9:00~9:30
診察料金 3割負担 724円~1,124円
1割負担 294円~434円
対象 当院の肥満減量外科外来を初めて受診される方
オンライン初診予約申し込み

〈カルテ作成及び診察に必要な情報をお伺いいたします〉

オンライン診療に際してご用意いただくもの

  • スマートフォン(iPhone、Android共に可)
  • 電波の良い環境
    ※電波の悪い環境の場合、ビデオ通話が繋がらないことがございます。
  • 健康保険証または医療券等(お申し込み時に必要です)

オンライン診療の流れ

  • オンライン初診予約申し込みフォームよりお申し込みください
    • カルテ作成及び診察に必要な情報をお伺いいたします
    • 保険証の確認が必要となりますのでご準備ください
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    • 仮予約となります
  • 予約日時確定後、メールが届きます
    • 診察日時を確定し、診察方法のご案内をいたします
  • 診察(ビデオ通話)
    • 予約時間になりましたら、電波の良いところで医師からの着信をお待ちください
    • 治療が必要と判断した場合、次回より当院にご来院いただき診察となります
  • お支払いについて
    • 診察終了後、ご請求書(支払い銀行口座)を郵送いたします

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